「消えた親友」
友人の秋山(あきやま)が突然姿を消したのは、何の前触れもないことだった。彼と連絡が取れなくなり、数日が経っても帰ってこない。心配になった雄太(ゆうた)は、秋山の家を訪ねることにした。
鍵がかかっていないドアを開けると、家の中は妙に整理整頓されており、まるで誰も住んでいないかのように静かだった。雄太はリビングを見回しながら、ふと机の引き出しに目が留まった。何かの手がかりを見つけたいと思い、引き出しを開けると、そこにはメモと小さな鍵が入っていた。
メモにはこう書かれていた。
「真実を知りたければ、この鍵を使え。だが、決して振り返ってはいけない。」
不穏な内容に戸惑いながらも、雄太は鍵を手に取り、メモに書かれていた住所へと向かった。それは郊外にある廃屋の一つだった。到着した場所は、荒れ果てた古い倉庫で、人の気配はなかった。
「秋山…本当にここにいるのか?」
雄太は不安を押し殺し、鍵で倉庫の錠を開けた。錆びたドアを押し開けると、薄暗い中に古びた家具と、何かを隠すように置かれた大きな箱があった。箱を開けると、そこには秋山の日記と共に、一連の奇妙な写真が収められていた。
写真には、秋山が誰かを監視しているような場面が映っていたが、写真に写っているのは雄太自身だった。彼はゾッとし、日記をめくり始めた。
「雄太が全てを知ったらどうするだろう…」
「彼は本当に俺のことを信じているのだろうか…」
「でも、そろそろ終わらせなければならない…」
そこには、秋山が密かに雄太を監視し続け、彼の行動を逐一記録していた内容がびっしりと書かれていた。さらに、最後のページにはこう書かれていた。
「雄太がこの場所に来たら、俺の計画は成功だ。今、彼はきっとこれを読んでいるだろう。」
その瞬間、背後でカチリと音がして、ドアが閉まった。雄太は慌てて振り返ると、そこには秋山が立っていた。
「お前、一体何をしてるんだ…?」雄太は震える声で問いかけた。
秋山はゆっくりと微笑み、低い声で答えた。「俺の観察は完了したよ、雄太。お前がここに来るまで、全てが計画通りだった。」
その言葉と共に、秋山は手にした鎖を振り下ろし、雄太を拘束した。気を失う間際、雄太は秋山の耳元で囁くような言葉を聞いた。
「これで、お前も俺の一部になるんだ…」
目を覚ましたとき、雄太は自分が箱の中に入れられていることに気づいた。動けない体を無理やり動かそうとするが、全てが無駄だった。秋山は箱の外から彼を見下ろし、再び笑った。
「お前が俺を疑い始めたあの日から、こうなる運命だったんだよ。これで、俺は安心して眠れる…」
秋山の足音が遠ざかり、倉庫に再び静寂が戻る。雄太は箱の中で、誰にも気づかれることなく、永遠に閉じ込められたのだった。